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2007/1/17(水) 23:50 |
| 国富消尽 1 |
昨年、忙しい時間の合間をぬって、多くの本に接しました。その中で一番勉強になり政治家として
教えられた本のナンバーワンは、吉川元忠・関岡英之著の「国富消尽」(PHP研究所)でした。
「目からうろこが落ちる」ようでした。2回読み直し、3度目には関係者や政治家仲間にプリントし
て、読んでもらおうという思いで、コンピューターにその要約を打ち込みました。
ある中小企業の経営指導者にプリントをわたしたところ、26回に分けてホームページに連載され、
読者から総仕上げに、全文一挙掲載を依頼され、実行されたとの聞きました。
私がせっかく苦労して作った名著の要約版です。プリントして配るより、ホームページに掲載し、
広く皆さんに読んでもらうべきと考え、数回にわけて連載します。
日本の閉塞の根源に、何があるのか。ともに考えましょう。
ご意見をお寄せください。 メールアドレス; koga@1sey.com
第一章
着々と進む日本企業買収の環境整備
2005年は、ライブドアによるニッポン放送株大量取得、ホリエモン対フジテレビの攻防、西武鉄道
グループの会長堤義明氏の有価証券報告書虚偽記載事件等、日本の株式市場や企業経営や日本型資本主
義そのものを問う事件。その背後に「米国による日本改造」が見える。ライブドアは米国系投資銀行リ
ーマン・ブラザーズから調達した巨額資金を使って東証の時間外取引でニッポン放送の発行済み株式の
3分の1強を一挙に取得。
これを機に、国会提出目前だった「新会社法案」で、「外国株対価の合併」、いわゆる「株式交換によ
る三角合併」が解禁されようとしていることへの危機感が激発し、解禁が1年凍結。
リーマン・ブラザーズに、なぜあれほどの金があるのか。現在、上場株式の約4分の1は外資。一部の
優良企業では、外国人持ち株比率がもう5割以上に。
端的にいうと、日銀が刷ったマネーが回り回ってアメリカのウォール街を潤し、その一部が日本に戻っ
てきて日本を買いまくるという、「新帝国循環」の構図。
それまでの中心的債権国は、イギリスもアメリカも自国通貨建てで資本輸出。日本のみは円建てではな
くドル建て、すなわち債務国側の通貨建てで資本輸出。実はここに、世界最大の債権国が経済危機に陥
り、その債権国に膨大な債務を負う世界最大の債務国が長期にわたる好景気を体験するという1990
年代後半以降の異常現象の原因。
ドルという通貨が事実上の基軸通貨でありながら、アメリカ一国の意向によってその価値を欲しいまま
に変動させうるという国際通貨システムの根本に横たわる矛盾。
80年代後半以降、アメリカに流入した膨大な日本のドル資産はドル安・円高の波にさらされる。
プラザ合意後の急激な円高で巨大な為替差損が発生したにもかかわらず、日本からアメリカヘの資本流
入は止らない。大蔵省は対米協調によりドルを支えつづけるだけで、独白のマネー戦略なし。大蔵省は
生保などの機関投資家に米国債購入を働きかけ、機関投資家にとっては折からのバブルによる含み益が
為替差損に対する心理的バッファとなっていた。
90年代になると状況は一変。米ソ冷戦の終焉と日本のバブル崩壊。「戦友」だったはずの日本はアメ
リカにとっての「経済的脅威」と認識され、93年に登場したクリントン政権は円高攻勢をかけ、95
年4月には1ドル80円。円高による対米資産の大幅な減価に加え、円高による生産コストの歴然たる
格差が製造業を直撃し、日本経済は甚大なダメージ。
また、バブル崩壊によって機関投資家は対米投資のリスク負担の拠り所を失い、90年代前半に日本か
らアメリカヘの資金環流は減少。
95年に日米間のマネー関係は急転し、ジャパン・マネーの対米流入は再び増勢に。その背景として、
同年1月に米財務長官が通商強硬派のベンツェンからウォール街(ゴールドマン・サックス証券)出身
で金融・市場重視派のルービンに交代。これに象徴されるアメリカ側の政策転換。
ドル高政策に転じ、1ドル80円割れをピークに、以後、相対的ドル高基調が続く。さらに90年代後
半の日本の異常なまでの超低金利政策が国内資金の対外流出を加速。再びアメリカは巨額のジャパン・
マネーを引き寄せ、経常赤字を埋めた余剰資金で積極的に海外投資を行なう「新帝国循環」の時代に。
≪日米の株価格差に潜む危険性≫
1995年以降、ルービン長官のドル高政策。経常収支の赤字は年間1500億ドルから、5000億
ドルと膨らむ。にもかかわらず「ドル高はアメリカの国益」だといって、アメリカにどんどんマネーを
流入させ、アメリカの株価は急激に上昇。株式時価総額でいうと、88年の2兆8000億ドルが97
年には11兆3000億ドルと、この10年間で約4倍に。
同じ時期に日本はピークの3兆9000億ドルが2兆2000億ドルに減少。89年末のバブルピーク
時に3万8915円をつけた日経平均は下落を続け、小泉政権の誕生後には一時の1万4500円から、
2003年4月には7600円に急落。日本はピーク時の3分の1、4分の1に。
企業収益からすると、日本の株はアメリカに比べてかなり割安。その結果、外国人持ち株比率が上昇。
この日米の株価の格差は相当深刻な問題。たとえば三角合併が解禁されると、非常に割安な日本株を
割高なドル建ての株でもって取得できる。
なぜ日本の株価は、不合理ともいえるほどの低迷を続けているのか。グローバル基準こそが元凶。株
式の持ち合い解消、時価会計や減損会計をはじめとする会計のグローバル基準、銀行に対するBIS規制。
これらを不況のどうしようもないときに導人。その結果が、株価7600円。
≪「外国株対価の合併」凍結≫
ホリエモンの行動のおかげで、新会社法のなかの「外国株を対価とする合併」、いわゆる三角合併の
解禁が一年凍結。自民党が法案提出を了解する直前のタイミングで間一髪。
「会社法制の現代化」プロジェクトの目玉が、「外国株対価の合併」、いわゆる「株式交換による三
角合併」の解禁。これは米国などでは、大企業を買収する際にも巨額の資金が必要なく、とくに大型
合併において主流の手法。
外国株を使った株式交換による三角合併が日本で解禁されたら、外国企業は買収資金の借り入れなく
とも、自社株を使ってたやすく日本企業を傘下に収めることができる。防衛策なく解禁されると、メ
ガバンクやトヨタなどでさえ、ひとたまりもない。「外資による日本企業の乗っ取り」を解禁するよ
うなもの。
日本政府が「外国株対価の合併」解禁の方針を固めた背後には、米国政府からの強い要求。
○ 法務省による会社法案の策定作業と同時並行的に、金融庁所管の企業会計審議会でも、企業合併
に関する会計基準を「時価方式(パーチェス法)」に統一する検討。
この新しい会計基準のもとでは従来の日本的な対等合併は難しくなり、敵対的買収を含めた吸収合併
が主流に。
○>財務省でも、外国株を対価として外資に買収される日本企業には、一定の課税を猶予する方向で
税制改正の検討作業。
つまり法務省、財務省、金融庁が連携するかたちで、法律、税制、会計の3つの分野で同時並行的に、
外資による日本企業買収を後押しする「改革」が準備。
この動きの司令塔が、「対日投資会議」。
設立は1994年。日本政府の組織。事務局として専門部会があり、13人の日本人委員、在日米国
商工会議所の役員、米国系証券会社の幹部、2名の外国人弁護士など10人の外国人が「外国人特別
委員」。
対日投資会議の専門部会は2004年に、「対日投資促進プログラム及び実施状況」を発表。
△ そのなかで「国境を越えた合併・買収が容易に行えるように」するという目的で、「外国株対価
の合併」の解禁や、先に紹介した企業合併会計への時価方式の導入、税制上の優遇措置などといった
ことを列挙。
△>また「企業情報の透明性、信頼性を高め、企業統治の強化を促す」という目的では、「委員会等
設置会社型」の企業統治制度、つまり米国型の社外取締役制度の導入など。それ以外にも時価会計や
減損会計といった国際会計基準の導入から司法制度改革を提言。
近年日本を揺るがせている「規制改革」の多くが、実は「対日投資促進プログラム」の一環だったこ
とは明白。「日本改造」プログラムが、過去10年問、国を挙げて組織的に推し進められてきたとい
うこと。
≪日本企莱買収のために達成された「成果」の数々≫
この対日投資会議が設置される契機は、1993年の宮沢総理とクリントン大統領の日米首脳会議で
合意された「日米間の新たな経済パートナーシップ」。これは日本では「日米包括経済協議」の名で
知られている。
個別産業ごとに展開されてきた日米交渉を一本化し、「障壁」を一挙に撤廃するため、投資分野の交
渉チャンネルとして「投資・企業関係作業部会」を設置。そこで米国側から突きつけられた要求を日
本国内で実現する受け皿が、対日投資会議。
「日米間の新たな経済パートナーシップ」は、2001年に行なわれた小泉総理とブッシュ大統領に
よる日米首脳会談の場で、新たに「成長のための日米経済パートナーシップ」と名づけられ、「投資.
企業関係作業部会」も「日米投資イニシアティブ」に改組。
この「日米投資イニシアティブ」は経済産業省と米国国務省を共同議長として毎年開催。2002年
以降、年次報告書が作成され、経済産業省の公式ホームページで公表。
2002年版の『日米投資イニシアティブ報告書』に、「日米間の新たな経済パートナーシ
ップ」以来の成果を掲載。
○>金融ビッグバン、電気通信事業の外資規制の撤廃、大規模店舗法の廃止など、個別産業分野にお
ける「成果」。
○ 持ち株会社解禁、合併手続きの簡素化、株式交換制度、会社分割制度、民事再生法、ストック
オプション、米国型コーポレート・ガバナンス、連結納税制度の導入など、商法.会社法関係分野の
「成果」。
○>連結会計や時価会計の導入など、会計基準・監査制度分野の「成果」…。
ライブドアや村上ファンドも、こうした「規制改革」の波に便乗するかたちで外資のおこぼれを先
回りして漁っている露払い役。
2003年版の報告書では、1年凍結された「外国株対価の合併」(株式交換による三角合併)が
「米国側の最大関心事の1つ」と明記。そして、米国側が日本に商法を改正せよと要求したのに対
し、日本政府が「2005年の通常国会に改正法案を提出することを目指して検討を進めており、
その中で三角合併や現金合併の恒久化も検討課題とされている」と同答した旨明記。
≪「消費者のため」という大義名分≫
アメリカが巧妙なのは、日本に何かを要求する際に、必ず「日本の消費者のため」という大義名分
を振りかざしてくること。これは、「日本国内の分裂を利用せよ」という、日米構造協議以来の戦
略。コメ、NTTの接続料の問題。アメリカの通信の自由化は大失敗。大失敗を日本にやれとは言え
ないから、「消費者の利益」で揺さぶりをかけてきた。NTT潰しが本当の狙い。
≪「トロイの木馬」に翻弄される日本≫
「国際社会のルール」も、実際には米国のルールを他国に押しつけるときの常套句。「科学的根拠
がない」(牛の全頭検査や京都議定書)という理屈も、米国が自国に不利になる事実を認めたくな
いときの言い逃れ。
日米構造協議で米国が要求したとおりに大店法を廃止したおかげで、全国津々浦々の商店街が「シ
ャッター通り」に。ですから「消費者の利益」のみを強調するのは、物事の一面しか見ない浅薄な
議論。
米国が相手の国に何かを要求するときに活用するのが「トロイの木馬」戦術。これは、日本内で米
国と利害が一致する著名人なり団体なりを見つけ出し、徹底的にテコ入れ、米国の要求を「日本の
必要」として代弁、広告塔として利用。
米国の「消費者のため」というレトリックと、「トロイの木馬」戦術に振り回され、完全に向こう
の轍にはまってしまった。
「対日投資促進プログラム」には、心理作戦として、テレビ番組、新聞広告、印刷物、ウェブサイ
ト、講演、セミナーなど・あらゆる機会を通じて日本国民を「啓蒙」することまで記載。
≪国民から見た三角合併の意味≫
三角合併で外資に買収された日本企業の株主は、大事な資産を価値のわからない、しかもファミリ
アでないドル建ての資産に振り替えられてしまう。ドル資産は必ず減価するから、これは国民の財
産権の侵害で、憲法違反。日本の投資家は、外貨資産の保有を強制される場合、差し止め請求もで
きるはず。
たとえばロシアの会社が日本の投資家に「あなたの株をロシアのルーブル建ての株に替えましょう」
と言ったら、誰が納得するか。
法案づくりに関わった法制審議会・会社法(現代化関係)部会長は江頭憲治郎。
アメリカは最終的には日本の「ドル化」を狙っている。三角合併によって日本の株主がドル建ての株
を持つようになれば、部分的とはいえ「ドル化」が進む。挙げ句の果てに、「いっそドルでいこう
じゃないか」となるのが最悪のシナリオ。
≪グローバル基準三点セット≫
金融制度のなかにBIS規制(自己資本比率規制)を導入させておいて、次に会計分野を囲い込む。米英
流の時価会計を「国際会計基準」というかたちで押しつけ、日本が呑まざるをえない状況に持ってい
く。
@>バブル崩壊後の株価の長期低落傾向のなかで時価会計を導入すれば含み損が顕在化するため、自己
資本比率を維持するためにも金融機関は保有株式を処分せざるをえない。
A>そうして株式の持ち合い制やメインバンク制を崩壊させて、日本企業の株式を市場に放出させてお
いて
B>今度は商法、会社法といった経済法の分野で「規制改革」を迫り、米国型のコーポレート・ガバナ
ンスを導入させ、米国型のM&A手法を導入させる。
気がつけば、日本企業の株式は、防衛策もない丸裸の状態で外資の攻勢にさらされる。
金融制度、会計制度、そして経済法と、次々と攻略され、完全に包囲され、為す術もなくなる。
残っているメニューは、医療と教育。この分野の"果実"も、アメリカは確実に狙っている。すでに詰め
の段階にあるといっていい。
日本人にある種の刷り込みが行なわれていて、若手でとくに野心的な人々が、人生の最初の手がかり、
方向性を求めるとき、日本式システムよりアメリカ式システムになびきやすいという点。サラリーマン
の40人に1人は、外資系。
「グローバリゼーション」は米国の国家戦略の以外の何ものでもない。
日本人が独自に編み出した、戦後の復興や高度成長の成功を支えてきた日本的システムや構造を意図的
に破壊しつつ、日本人の脳裡に「日本は『構造改革』しなければオシマイだ」と刷り込み、米国にとっ
て都合のいいかたちへと改造しようという意図とシナリオのもとに、米国が過去10数年にわたって展
開してきた国家戦略。
第1章 完
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